第21章 【第二十話】残り香は、まだ熱い
「歓迎のしるしに、僕の秘蔵のワインを開けちゃおうかな!」
コムイさんが、上機嫌でワインの瓶を掲げる。注がれたグラスを、クロウリーは静かに揺らした。香りを確かめて、一口。
「……雨の多かった年の葡萄であるな」
「な、なんで分かるの!?」
「……クロちゃん、そうしてると、ほんと絵になるさ」
少し離れた席から、ラビが感心したように言った。
「反対の手にシュークリーム持ってなきゃ、完璧なのにな」
「何を言うか。この甘さと、ワインの渋み……これ以上の組み合わせは、ないのである」
うっとりと語るクロウリーに、「シュークリームで!?」と科学班の声が揃う。
その輪の向こうで、ラビの目がふとこちらに向く。
目が合った。
それだけで、周りの賑わいが少し遠くなる。
……駄目だ。このままじゃ、まともに顔も見られない。
「ティファちゃん」
上機嫌のコムイさんが、今度は私の前にもグラスを差し出してきた。深い赤のワインが揺れている。
「クロウリーのお墨付きだよ」
……少しくらい酔った方が、普通に話せるかもしれない。
「……いただきます」
そのまま、一気に飲み干す。
「いい飲みっぷりだな!」と笑うリーバー班長に続いて、科学班も囃し立てる。