第21章 【第二十話】残り香は、まだ熱い
夜。
食堂へ向かう廊下の先から、もう賑やかな笑い声が聞こえていた。扉を開けると、料理の香りと暖炉の熱が、ふわりと身体を包んだ。
クロウリーの歓迎会は、始まって早々に大騒ぎになっていた。科学班に囲まれたクロウリーは、もう半泣きだ。
「こんなに歓迎されたのは初めてなのであるぅぅ……!」
「クロウリー、もっと食べてください!」
「酒も飲むさー!」
騒がしい空気に、自然と頬が緩む。
「クロちゃん、好きな食べ物は? 何でも作っちゃうわよ」
大皿を抱えたジェリーさんに聞かれて、クロウリーは目を瞬いた。
「す、好きな……?」
少しもじもじしてから、消え入りそうな声で答える。
「……シュー、クリーム……」
一瞬、食堂が静まり返った。
「可愛い!!」
「あら〜、任せなさい! 山ほど焼いてあげるわ!」
間もなく、焼きたてのシュークリームが皿に積み上げられた。目を輝かせるクロウリーの横から、アレンの手が当然のように伸びる。
「アレンくんのじゃないでしょ!」
リナリーの声に、どっと笑いが起きる。
シュークリームを両手に抱えたまま、クロウリーは泣き笑いみたいな顔をしていた。
あの城から、ずっと出られなかった人だ。
……よかった。