第21章 【第二十話】残り香は、まだ熱い
ラビは私を見るなり、ふっと表情を緩めた。
「クロちゃん、科学班に捕まって泣きそうになってる」
「もう?」
「もう」
思わず吹き出すと、ラビも小さく笑った。
隣で、リナリーがそっと口元を押さえた。私とラビを見比べて、小さく微笑む。
「……私、先に戻ってるね」
「え、リナリー?」
「歓迎会までまだ少し時間あるし、ティファも一度部屋で休んだ方がいいと思うから」
それから、ちらりとラビを見て意味ありげに微笑む。
「……へいへい」
ラビが、苦笑まじりに片手を上げた。リナリーはくすりと笑って、医務室を出ていった。
扉が静かに閉まると、部屋が少しだけ広くなった気がした。消毒液の匂いと、白いカーテンの揺れる音。そして、目の前にいるラビの気配。
急に落ち着かなくなって、包帯の巻かれた肩に視線を落とす。
「……もう大丈夫だから」
「分かってる」
意外なほどあっさり返されて、思わず顔を上げた。ラビの目が、ふいに私の髪へ移った。
「……髪、乱れてる」
「え?」
手を上げるより早く、ラビの指先が銀髪に触れた。絡まった一房を、ゆっくり梳くように整える。
その指が、ほんの一瞬だけ耳元を掠めた。
「っ……」
思わず肩が跳ねると、ラビが小さく笑う。
「……敏感」
ぼそりと落とされた一言に、顔が一気に熱くなった。