第21章 【第二十話】残り香は、まだ熱い
教団に戻った頃には、空はもう深い群青に沈みかけていた。長い任務と移動の疲れが、一気に押し寄せてくる。本部の巨大な門が見えた途端、張り詰めていた気持ちが少しだけ緩んだ。
「お、おおお……大きいのである……!」
汽車を降りたクロウリーは、門を見上げたまま本気で怯えている。
「中入ったらもっと驚くさ」
肩を揺らして笑うラビの隣で、アレンも小さく笑った。
その直後、ゴゴゴゴ……と重たい音が響いて、巨大な門の真ん中がゆっくりと蠢いた。門そのものから浮かび上がるように、大きな男の顔が現れる。
「――止マレ、エクソシスト」
「ぬおおおおお!? 門が喋ったのであるぅぅ!!」
飛び上がるクロウリーに、ラビが慣れた様子で片手を振った。
「アレスティーナだよ」
アレスティーナはじろりとこちらを見回して、巨大な目で一人ずつ確かめていく。
「確認完了……ラビ、アレン、ティファ……」
そこで、ぴたりと視線が止まった。
クロウリーだ。
「……AKUMAノ血液反応ヲ検知」
「ぬ?」
「侵入者認定。コムリン出動」
「待っ――」
ラビの制止より早く、ガコン!! と地面が開いて、大型のコムリンが飛び出してきた。
「侵入者排除!! 本日ノ夕食ハ吸血鬼ノ香草焼キデース!!」
「ぬおおおおおお!?」
半泣きで逃げ回るクロウリーに、私は思わず吹き出しそうになった。
「ちょ、ちょっと待って! クロウリーは味方よ!」
コムリンは止まらない。代わりに、聞き慣れた高笑いが響いた。
「はーっはっはっは!!」
門の上で、白いコートを翻したコムイさんが、無駄に格好良く立っていた。
「安心したまえ皆!! 一度出動したコムリンは、もう誰にも止められない!!」