第21章 【第二十話】残り香は、まだ熱い
「やめろ室長!!」
科学班の総ツッコミにも、コムイさんは爽やかな笑顔のままだ。
「大丈夫! 美味しく調理されるだけだから!」
「大丈夫じゃないのであるぅぅぅ!!」
「兄さん」
静かな声に、全員の背筋が凍った。振り返ると、リナリーがにこやかに微笑んで立っている。笑顔なのに、怖い。
コムイさんが、青ざめた。
「リ、リナリー?」
「クロウリーを料理するって、どういうこと?」
「いや、これはだね――」
ドゴォッッ!!!
凄まじい音と共に、リナリーのかかと落としがコムイさんの脳天に炸裂した。
「ぎゃあああああああ!!?」
コムイさんが撃沈すると同時に、コムリンもぴたりと止まる。リナリーは、にっこり微笑んだ。
「おかえりなさい、皆」
「たっ、……ただいま……」
ぼそっと呟くラビの横で、クロウリーが半泣きのままアレンに縋り付いた。
「た、助かったのであるぅぅ……!」
「分かりましたから、離れてください……!」
苦笑していると、リナリーの視線が私の右肩で止まった。団服の下の包帯に、気付いたらしい。
「ティファ、その肩……」
「……ちょっと、傷口開いちゃって」
「ちょっとって……!」
小さく笑ってみせても、ラビはじっと私の右肩を見ていた。
「ティファは、先に医務室へ行ってください」
縋り付くクロウリーを引き剥がしながら、アレンが続ける。
「僕達も、クロウリーを案内したら、すぐに診てもらいますから」
「分かったわ……じゃあ、後でね」
「私も一緒に行くわ」
そう言ってくれたリナリーに付き添われて、私は医務室へ向かった。