第21章 【第二十話】残り香は、まだ熱い
私とアレンは、同時に顔を見合わせた。
「……やっぱり、あの花」
宿の窓辺に置かれていた、小さな鉢植えを思い出す。
小さな花びらの奥から妙に鋭い牙を覗かせる食人花を前に、まだ幼かったアレンは真っ青になっていた。
師匠は煙草を咥えたまま、泣きそうなアレンの頭を片手で掴んで、面倒くさそうに言い放ったのだ。
――枯らしたりしたら、貴様の頭も枯らすからな。
――頭を枯らすって何ですかぁぁぁ!?
同じことを思い出したのか、アレンの顔が引き攣った。
「まさか、あの花をクロウリーに返しに来ていたなんて……」
「で、クロス元帥は花を返しただけだったんさ?」
ラビが尋ねると、クロウリーは頷いた。
「うむ。ただ、その花が少しおかしかったのである」
「おかしかった、というと?」
「突然、吾輩の指に噛み付いたと思ったら、みるみる枯れてしまったのである」
「噛み付いた直後に?」
思わず眉を寄せると、クロウリーは大きく頷いた。
「そうである。その後、急に身体が苦しくなって……毒花だったのかと思ったのである」
喉元を押さえ、その時を再現するみたいに身を折る。
「ガハッ、と咳き込んだら、歯が全部抜け落ちたのである!!」