第20章 【第十九話】もう譲れない
Side:ティファ
「ティファ嬢ぉぉぉ!!」
外套の肩に雪を積もらせたまま、クロウリーがふらつく足で駆け寄ってくる。待合では、村人達が怯えた顔で距離を取っていた。
その後ろに、アレンがいた。
ラビに答えようとした時、浮かんだのは、この顔だった。
まともに、目を合わせられなかった。
「そ、その肩は大丈夫であるか!? 痛むのであるか!?」
私の前に膝をついたクロウリーが、包帯を見るなり顔を歪める。
「吾輩のせいで……」
「違うわ。これは私が――」
「違わぬ!!」
勢いよく上げた赤い目は、泣き腫らしたままだった。
「吾輩が、エリアーデのことを何も知らなかったせいで……ティファ嬢まで、傷付けてしまったのである……」
声が、途中で崩れた。
クロウリーは、ラビの額のガーゼにも目を向けた。
「ラビも……すまなかったのである」
「オレのは、かすり傷さ。……って言ったら、さっき医者のじーさんに怒られたけど」
廊下の奥から、村人達のひそひそ声が聞こえてくる。
「……本当に、あの吸血鬼を中へ入れるのか……?」
「また誰か襲われたら……」
クロウリーの肩が、目に見えて縮こまった。
「……す、すまぬ。吾輩がここにいては、皆、怖いであるな」
ふらつきながら立ち上がろうとするクロウリーへ、反射的に左手を伸ばしていた。
「待って。ここにいて」
「ティファ嬢……」
「怪我をしているのは、貴方も同じでしょう」
赤い目が、大きく揺れた。
杖をつく音が近付いてきたのは、その直後だった。さっき私の傷を診てくれた老医師が、村人達の間を抜けて、クロウリーの前で足を止める。