• 小
  • 中
  • 大
  • テキストサイズ

【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第20章 【第十九話】もう譲れない



黙り込んだ僕を、クロウリーはしばらく見ていた。


「アレンが吾輩を置いて行けぬなら、吾輩が一緒に行くのである」

ふらつきながら、ベッドから立ち上がる。


「……二人に、謝らねばならぬからな……特に、ティファ嬢には。あんな傷を負わせた吾輩のために、歌ってくれたのである」

「でも、まだ休んでいた方が……」


「……いや、大丈夫である。いつまでも、城に閉じこもったままではいられぬ」

力なく笑うクロウリーに、それ以上は何も言えなかった。


*

雪の降り始めた道を、クロウリーの歩幅に合わせて歩く。


――会えるうちに。

その言葉が背中を押すのに、僕の足は、クロウリーの隣から離れなかった。


診療所の扉を、二人で押し開ける。


廊下の窓辺に、ティファがいた。

左手を頬に添えたまま、ぼんやりと窓の外を見ている。


声を掛けるより先に、待合の方から悲鳴が上がった。

「……きゃっ!」
「吸血鬼だ……!」


騒ぎを聞きつけたのか、奥の扉が開く。額にガーゼを貼ったラビが、顔を出した。

騒ぎの方より先に、その目はティファを見つけていた。


ティファの肩が、小さく跳ねた。頬に当てていた手を慌てて下ろして、俯く。その横顔が、みるみる赤くなっていった。

ラビも、がしがしと頭を掻いて、ティファから目を逸らす。


――僕の知らない顔だった。


左手の爪が、手のひらに食い込んでいた。

/ 382ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp