第20章 【第十九話】もう譲れない
黙り込んだ僕を、クロウリーはしばらく見ていた。
「アレンが吾輩を置いて行けぬなら、吾輩が一緒に行くのである」
ふらつきながら、ベッドから立ち上がる。
「……二人に、謝らねばならぬからな……特に、ティファ嬢には。あんな傷を負わせた吾輩のために、歌ってくれたのである」
「でも、まだ休んでいた方が……」
「……いや、大丈夫である。いつまでも、城に閉じこもったままではいられぬ」
力なく笑うクロウリーに、それ以上は何も言えなかった。
*
雪の降り始めた道を、クロウリーの歩幅に合わせて歩く。
――会えるうちに。
その言葉が背中を押すのに、僕の足は、クロウリーの隣から離れなかった。
診療所の扉を、二人で押し開ける。
廊下の窓辺に、ティファがいた。
左手を頬に添えたまま、ぼんやりと窓の外を見ている。
声を掛けるより先に、待合の方から悲鳴が上がった。
「……きゃっ!」
「吸血鬼だ……!」
騒ぎを聞きつけたのか、奥の扉が開く。額にガーゼを貼ったラビが、顔を出した。
騒ぎの方より先に、その目はティファを見つけていた。
ティファの肩が、小さく跳ねた。頬に当てていた手を慌てて下ろして、俯く。その横顔が、みるみる赤くなっていった。
ラビも、がしがしと頭を掻いて、ティファから目を逸らす。
――僕の知らない顔だった。
左手の爪が、手のひらに食い込んでいた。