第20章 【第十九話】もう譲れない
「……分かんねぇって、言ったよな」
翠の瞳が、私の顔から離れない。
「なら、嫌いになったわけじゃ……ねぇんだろ」
答えられなかった。
……嫌いになれていたら、こんなに疲れたりしない。
ラビが、詰めていた息をゆっくりと吐いた。
「オレ、本当なら……誰にも執着しちゃ駄目なんさ」
その声には、自嘲が滲んでいた。
「歴史を見る側でいろって、ずっと教えられてきた。……誰かの人生に、入り込み過ぎるなって」
私を掴むラビの手が、微かに震えていた。
「なのに……お前のことだけは、見てるだけじゃいられなくなった」
ラビが、少しだけ身を乗り出した。
「軽いわけ、ねぇだろ……掟破ってんだぞ、こっちは」
息が、止まった。
「だから……待たなくていいなんて、言うなよ」
ラビの声が、少しだけ揺れた。
「……好きなんさ、お前が」
頭の中が、真っ白になった。
――好き。
「……っ」
声にならない。
ラビの目はまっすぐなのに、耳だけが赤かった。
ラビは、急かさなかった。ただ黙って、待っている。
答えなきゃ、と思うのに喉が動かない。
「……どうして、私なの」
代わりに零れたのは、別の言葉だった。
勝手に拗ねて、勝手に逃げようとして。
……こんなに面倒なのに。