第20章 【第十九話】もう譲れない
診療所に着いた頃には、空が薄く白み始めていた。
古びた、小さな診療所だった。消毒液の匂いがする治療台に座らされて、老医師に肩の傷を診てもらう。
傷そのものは浅かった。ただ、治りかけていた右腕をまた痛めたせいで、思っていたより悪くなっているらしい。
「しばらく右腕は使うな」
包帯を巻かれるたびに、焼けるような痛みが走る。小さく頷くと、医師は隣の椅子のラビへ顎をしゃくった。
「次。そっちの赤毛」
「オレはいいって。かすり傷さ」
「額から血を垂らしてる奴が言うな」
有無を言わさず額を拭われて、ラビが「いってぇ!」と声を上げる。
ちらりと、ラビの目がこちらを向いた。私は、気付かないふりをした。