第3章 【第二話】次へ繋ぐ手
「……ティファ」
掠れた、小さな声。
私の名を呼ぶ、初めてのアレンの声だった。
胸が、熱くなる。
「……うん」
それしか返せなかった。
涙が出そうになり、慌てて唇を噛む。
マザーは喜びに顔を綻ばせたけれど、師匠だけは違った。険しい表情のまま、じっとアレンを見ている。
「クロス?」
マザーが訝しげに声を掛ける。
「こいつ」
師匠の目が、ほんのわずかに細まった。マザーへ視線だけを向け、低く呟く。
「マナみてぇな喋り方をしやがる」
一瞬、部屋の空気が静まった。
アレンは、きょとんとしたように師匠を見た後、顔を伏せ膝の上で指を絡めた。
師匠は微かに眉を寄せる。
私は、どう受け止めればいいのか分からなかった。
「……変、ですか?」
アレンが、不安そうに尋ねた。
師匠も、マザーも答えない。その沈黙に耐えられなくて、私は抱えていた布を胸へ寄せたまま、小さく首を横に振った。
「変じゃないわ」
アレンの瞳が、揺れる。
「……本当ですか?」
「うん」
私は、できるだけ柔らかく笑った。
「アレンが話してくれて、嬉しい」
その言葉に、アレンの俯いた頬がほんのわずかに緩んだように見えた。