第19章 【第十八話】偽物じゃなかった愛~クロウリー編③
「どいてください。貴方を放っておけば、もっと人が死ぬ」
「……うるさいわね」
紅い瞳が、鋭く細められる。
「お前達さえ来なければ……私はただ、アレイスターと静かに過ごしていたかっただけなのに」
「それで、人を殺していい理由にはなりません」
「黙れッ!!」
絶叫と同時に、無数の蔓が殺到した。左腕を振り抜いて、まとめて薙ぎ払う。
ドォン――ッ!!
外壁が、内側へ爆ぜた。
吹き荒れる土埃の中、黒い影が石床へ叩き付けられる。床を削りながら転がり、砕けた机に激突して、ようやく止まった。
「……クロウリー!?」
血塗れのクロウリーが、呻きながら身体を起こそうとしている。
崩れた壁の向こうには、月光に照らされた墓地を背に、額から血を流したラビと、右肩を押さえたティファが立っていた。
「ったく……頑丈過ぎるさ、クロちゃん……!」
荒い息を吐きながら、ラビが壁を越えて踏み込んでくる。ティファも後に続いた。肩から滲んだ血が、団服を赤く染めている。
「アレン……!」
「アレイスター様!!」
切羽詰まった声が、ティファの言葉を遮った。
エリアーデは、僕のことなど忘れたようにクロウリーへ駆け寄った。膝をついて、呻く身体を抱き起こす。
「アレイスター様、大丈夫ですか!?」
クロウリーが、ゆっくりと瞼を開いた。
「……エリ……アーデ……」
左目が、また熱を持った。
エリアーデの美しい輪郭に、禍々しい影が重なる。その奥で、鎖に縛られた魂が蹲っている。
「――ぁ……」
クロウリーの目が、大きく見開かれた。
「アレイスター様……?」
「エ……エリアーデ……な、何であるか……それは……?」