第19章 【第十八話】偽物じゃなかった愛~クロウリー編③
Side:ティファ
崩れた壁を越えた途端、息を呑んだ。
アレンの左目が、隠れていたものを照らし出していた。エリアーデの身体に、歪んだ影が重なっていた。その奥で、ひとつの魂が黒い鎖に縛られて蹲っている。
――聞こえる。
回廊では花粉のせいでつかめなかった気配が、今ははっきり聞こえる。
たったひとつなのに、肌の内側を引っかかれるような悲鳴だった。逃げられないまま、ずっと助けを呼んでいる。
右肩の痛みも忘れて、息を詰めた。
「う……わ……」
隣で、ラビが顔を引き攣らせる。
「……あれが、AKUMAに囚われた魂ってやつか。そうなんか、アレン」
「……僕の左目は、それを映すんです」
左目を押さえたまま、アレンが短く答えた。
エリアーデが、よろめくように後退る。
「ち、違うわ……アレイスター様、これは違うの……」
取り繕うように笑う声が、震えていた。
「エリアーデ……お前から出ている、それは……?」
床に崩れたまま、クロウリーが掠れた声で問う。エリアーデの笑みが、ゆっくりと剥がれ落ちていった。
ラビが鉄槌を構え直して、エリアーデを指差す。
「クロちゃん、その姉ちゃんはAKUMAさ! 説明したろ、さっき! アンタとオレらの敵!」
「て……敵……?」