第18章 【第十七話】歌声は吸血鬼を惑わせる~クロウリー編②
「っぶね……! ったく、美人に騙されてんじゃねぇよ……!」
「ラビがそれ言います?」
「あれは花粉だって言ったろ!?」
私は、黙ってレイピアを構え直した。
そのやりとりの隙すら、クロウリーは見逃さなかった。
「銀髪の女ァ!! エリアーデを怯えさせたのは、貴様かァァ!!」
血走った目が、まっすぐ私を射抜く。
ふと、尖塔の上のエリアーデと目が合った。紅い瞳が、すっと細められる。
……私を、見ている?
「ティファ、避けて!」
アレンの声より速く、地面が砕けた。
咄嗟にレイピアを構える。凄まじい力に腕ごと弾かれ、がら空きになった肩口に、鋭い牙が食い込んだ。
「っ……!」
焼けるような痛みが走る。
裂けた団服の下から、熱い血が滲み出した。三角巾が外れたばかりの右腕が、肩から先ごと痺れていく。
「「ティファ!!」」
二人の声が重なる。
地面に叩き付けられる寸前、ラビの腕に抱き留められた。
翠の目が、私の肩に落ちる。
「……噛まれんなって、言ったろ」
ラビは私をそっと地面に降ろすと、鉄槌を握り直した。柄が、ぎしりと鳴る。
再び牙を剥いたクロウリーの前に、アレンが割って入った。
「目を覚ましてください!」
巨大な爪が牙を受け止め、火花が墓地に散る。その隙を、ラビの鉄槌が横から叩いた。