第17章 【第十六話】吸血鬼退治と三人の距離~クロウリー編①
クロウリーが城の奥へ消えたあと、中庭には妙な静けさが残っていた。霧の向こうでカラスが不吉に鳴いている。
「アレン、大丈夫!?」
駆け寄って、左手の傷を確かめる。アレンは目を瞬いてから、困ったように笑った。
「た、多分……」
気付けば、村人達がじりじりと、私達から――特に、噛まれたアレンから距離を取っていた。
「か、噛まれた……」
「吸血鬼に……」
「えっと……そんなに離れなくても」
「だ、大丈夫です!!」
そう言いながら、村人達はさらに一歩下がった。
「……リナリーに絶交されんな、アレン」
呟いたラビの首には、なぜか大量のニンニクが下がっていた。右手には、木の杭まで握っている。
「……ラビ。それ、何?」
「ん? 護身用?」
「信じてるじゃない」
「さっきリナリーのこと笑ってましたよね? しかも、どこから持ってきたんですか」
「村人がくれた」
完全装備だった。
ぐぅぅ……。
中庭に、間の抜けた音が響いた。ラビが無言で、首のニンニクを一つ、アレンに差し出す。
「……食べませんよ!?」
「ふ、ふふ……っ」
もう、堪えられなかった。
「……ったく。お前ら二人とも、放っとくと危なっかしいんだよ」
ぼやきながら、ラビは地面に落ちていたアレンの手袋を拾って、ぽいと投げ渡した。
アレンが、ふと真顔になった。銀灰色の瞳が城の奥を見据える。
「……さっき攫われた人のこともあります。急ぎましょう」
空気が、引き締まった。私が頷くと、ラビも首のニンニクを外して、ホルダーの鉄槌を確かめた。