第17章 【第十六話】吸血鬼退治と三人の距離~クロウリー編①
男が、ゆっくりと顔を上げる。血に濡れた口元と、真っ赤な瞳がこちらを捉えた。
村人達が悲鳴を上げて逃げ散っていく。
ラビが、ちらりとこちらを見た。
「ティファ、絶対噛まれんなよ」
「え?」
「リナリーに泣かれる」
……それ、今言うこと?
言い返す前に、クロウリーが地を蹴った。
「来る!!」
「――満!!」
ラビの鉄槌が、唸りを上げて巨大化した。
「満!! 満!! 満!!」
轟音とともに、巨大な鉄槌がクロウリーを押し潰す――ように見えた。
「……は?」
ラビの顔が引き攣る。クロウリーは、巨大化した鉄槌の柄を牙で受け止めていた。ぎりぎりと、鉄を噛む音が響く。
「うそぉ!? すげぇ歯だなぁオイ!!」
「フフフフ……」
その隙を逃さずアレンが飛び込んだ。巨大化した白銀の左手が、クロウリーの身体を掴み上げる。
「大人しくしててください!!」
「フハハハハ!! 奇怪な童どもだ!! 私に無駄な時間を使わせおって!! お前らも化け物か!!」
「……エクソシストです」
「こんばんはァ」
真っ直ぐ見返したアレンに、クロウリーが妙に丁寧に挨拶する。
「私は忙しいんだ。離せや」
がぶっ。
「えっ」
クロウリーがアレンの左手に噛み付いていた。
「アレン!!」
駆け寄ろうとした私より先に、ラビが叫ぶ。
「わーーっ!! アレン!!」
クロウリーの動きが、ぴたりと止まった。顔色がみるみる変わっていく。
「げぇぇぇぇぇぇ!! 苦い!! おうぇぇぇぇ!! 洗面器!! 洗面器どこォ!!」
「え……」
呆然とする私達の前で、クロウリーは口を押さえたまま、倒れていた村人を抱え上げた。
「待て!!」
ラビの声も届かない。クロウリーは凄まじい速さで城の奥へと消えていった。