第17章 【第十六話】吸血鬼退治と三人の距離~クロウリー編①
村人達は、震えながら門を指差した。
「さ、さぁ前へ……!」
完全に他人任せである。
ラビが溜め息を吐きながら門を押し開けた。
中庭には、不気味な石像がずらりと並んでいる。どれも歪な笑みを浮かべていて、妙に視線を感じた。
「……悪趣味ね」
眉を寄せた私の横で、ラビがふとアレンを見た。
「あれ? アレン、なんでもう手袋外してんの?」
露わになったアレンの左手で、十字架が鈍く光っている。
「……まさか、怖いの?」
「ち、違います」
「へぇ?」
「そういうラビこそ、さっきから右手でずっと武器握ってますけど?」
ラビが、自分の右手に目を落とす。ホルダーの鉄槌の柄を、しっかりと握り締めていた。
何事もなかったように手を離して、ラビは咳払いをした。
「……オレは怖くなんかないさー」
棒読みだった。
石像の並ぶ中庭を、冷たい風が吹き抜けていく。カラスの鳴き声が、夜空に不気味に響いていた。
私は、無意識に胸元を押さえていた。
「……何かいる」
ぞわり、と。背筋を撫でるような視線に、三人同時に振り返る。
ラビが反射的に私の前へ半歩出た。アレンも左手を構えて、霧の奥を睨む。
気配だけが近付いてくる。速い。
「来る!」
黒い影が視界を裂いた。速過ぎて目が追いつかない。影は私達の横をすり抜け、後ろにいた村人達の中へ飛び込んだ。
「ぎゃあああああっ!!」
「フ、フランツが!!」
「フランツが殺られたぁぁ!!」
「出た!! アレイスター・クロウリーだァァァ!!」
霧の向こうに、一人の男がいた。
青白い肌。長い牙。その牙が村人の首筋に深く沈んでいる。滴る血に、アレンとラビが同時に目を見開いた。
「……ウソ」
「マジで吸血鬼!?」