第17章 【第十六話】吸血鬼退治と三人の距離~クロウリー編①
集会所を出ると、霧はさっきより深くなっていた。
霧の向こう、森の奥に、黒々とした古城がそびえている。巨大な獣が口を開けて、獲物を待ち構えているようだった。
クロウリー城。
「……行くしかないですね」
静かに呟いたアレンに私も頷く。ラビは面倒臭そうに後頭部を掻きながら、太もものホルダーにある鉄槌に手を掛けていた。
「クロス元帥絡みじゃ、無視できねぇしな」
村人達の案内で森へ足を踏み入れる。夜の森は不気味なほど静かだった。湿った土の匂いと、霧に濡れた枝葉。どこか遠くで、カラスが鳴いている。
「一応、コムイに連絡しとくさ」
ラビがゴーレムを教団の通信へ繋ぐ。呼出音のあとに聞こえてきたのは、リナリーの声だった。
『あっ、アレン君!? どうしたの、連絡遅いから心配してたのよ!』
「すみません。少し状況が複雑で……」
アレンが苦笑しながら、クロウリー男爵のこと、吸血鬼騒ぎ、師匠の痕跡を順に説明していく。リナリーは真剣な声で聞いていた――はずだった。
『……吸血鬼?』
途端に、声色が変わる。
『だ、だめよアレン君!! 吸血鬼に噛まれると、吸血鬼になっちゃうらしいから!! 絶対噛まれないでね!?』
森を、風が抜けていった。
隣のアレンとラビをちらりと見ると、二人とも、何とも言えない顔をしている。
……リナリー、本気で信じてるんだ。