第17章 【第十六話】吸血鬼退治と三人の距離~クロウリー編①
「この村の奥には、昔から恐ろしい吸血鬼が住んでおるのです。その名も――クロウリー男爵」
村人達が怯えたように身を寄せ合う。
「昼間は決して姿を見せず、奴の住む古城からは、毎夜、獲物の悲鳴が止まぬ……。城へ入ったら最後、生きては出られぬと伝えられております」
「そ、そんなまさか……吸血鬼なんて――」
縛られたまま眉を下げたアレンに、村長がカッ!! と目を見開いた。
「お疑いか!!?」
「ひっ……ご、ごめんなさい! 続けてください!」
隣で、ラビが肩を震わせる。
「お前、完全に捕まった小動物じゃん……っ」
呆れながらも、私は集会所の空気に意識を向けた。古びたランプの火が揺れて、怯えた村人達の顔をぼんやり照らしている。
古城があるという方角から、肌の内側をなぞられるような、薄い気配がしていた。
「……とりあえず、縄を解いてもらえないかしら?」
「ほ、本当に逃げませぬか!?」
「逃げません」
アレンが、真顔で頷いた。
「放っておくと、後味悪いので」
「……お前、その言い方どうなん」
村長はしばらく迷うように視線を彷徨わせていたが、観念したように頷いた。
「……縄を」
村人が恐る恐る背後へ回り、手首を締め付けていた縄が、ぎし、と緩められる。血の巡りが戻って、指先がじんと痺れた。
手首をさすっていると、ラビの視線がそこに落ちた。
「……痕、残ってねぇ?」
「平気よ」
ラビは何も言わずに、縄を巻いた村人の方へちらりと目をやった。目が合った村人が、びくっと肩を竦めていた。