第3章 【第二話】次へ繋ぐ手
何週間経っても、顔の左側の傷はアレンを苦しめていた。
夜になると、眠ることさえできないほど身体を震わせる。痛みに声を上げ続けて潰れた喉からは、もうまともな声も出ない。
食事もほとんど口にしなかった。
マザーが用意したスープも、柔らかく煮たものも、アレンは見ようとさえしない。
ある日、師匠が苛立ったように椅子を引き、匙を手にした。
「口開けろ」
ベッドの上で膝を抱えていたアレンは、微かに顔を背ける。
「食わねぇと死ぬぞ」
それでも、反応はない。
師匠の眉間へ、深い皺が刻まれた。
「師匠……」
思わず声をかけると、彼は鬱陶しそうにこちらを見る。
「なんだ」
「無理に食べさせても……」
「食わなきゃこいつは勝手に死ぬ」
吐き捨てるような言葉。
その荒い声音に、アレンの肩が小さく跳ねた。
マザーが、背後から低く言う。
「クロス。子供に当たるんじゃないよ」
「当たってねぇ」
「その顔で匙を突きつけて、怖がらせてないと思ってるなら救いようがないね」
師匠の口元が険しく歪む。けれど、匙を置くことはなかった。
乱暴に見える手つきで、少しだけスープを掬う。