第17章 【第十六話】吸血鬼退治と三人の距離~クロウリー編①
数時間後。夜汽車は重々しい蒸気音を響かせながら、霧深い森の間を走っていた。
ランプの灯りが揺れるコンパートメントで、アレンが地図を広げている。
「目撃情報だと、この先の村を通っていったみたいですね」
「その村で、また何かやらかしてそうだな」
頬杖をついたラビの向こうで、窓の外を白い霧が流れていく。その奥に、言葉にできないざわめきを感じた。
「ティファ? 大丈夫ですか?」
「……ええ。ただ、少し胸騒ぎがして」
ぐぅぅぅ……。
静かな車内に、盛大な音が響いた。
ラビが吹き出す。アレンが、耳まで真っ赤になった。
「ち、違います! 今のは……!」
ぐうぅぅぅ。
二度目は、さっきよりずっと大きかった。
「ふふ……アレン、お腹空いたの?」
「出発前、バタバタしてて食べ損ねたんです……」
拗ねたように言うアレンに、思わず肩が震える。ラビは笑いながら机に突っ伏した。
「色気ねぇなぁ」
「ラビは黙っててください」
「はいはい」
張り詰めていた空気が、少しだけ和らいだ。
汽車がゆっくりと速度を落とし始め、車掌の声が響く。
『まもなく、ダンケルン村――』
霧の中に、小さな駅が浮かんでいた。古びた街灯が、ぼんやりとホームを照らしている。