第16章 【第十五話】順番待ちの恋
ラビが、ぴたりと動きを止めた。
それから、片手で顔を覆う。
「……待つって言った直後に、それはずりぃだろ」
指の隙間から覗く耳が、赤い。
きょとんと瞬きをしてから、ようやく、自分の言葉の意味に気付いた。
……なんて答えたんだろう、なんて。
それじゃあ、断るつもりがないみたいじゃない。
「……っ」
顔へ一気に熱が集まって、慌てて視線を逸らす。
「……ほんと、勘弁してくれ」
指の隙間から零れた声は、すっかり弱りきっていた。
ラビは顔から手を下ろすと、まだ赤い耳のまま背を向けた。
数歩行ったところで、肩越しに振り返る。
「あと、それ」
顎で、私の背中を示す。
「面白かったら、感想聞かせてくれな」
「……み、見えてたの!?」
「背表紙、丸見えだったさ」
ひらりと左手を振って、ラビは書架の向こうへ消えていった。
背中の本を、ぎゅっと抱え直す。顔が、さっきよりずっと熱い。
詰めていた息が、ようやく抜けていく。
それからというもの、ラビは本当に答えを急かさなくなった。
そのくせ、目が合っても、前みたいにすぐには逸らさない。軽口の合間に、ふと、あの日と同じ目をする。
そのたびに、どうしていいか分からなくなる。
急かさないのに、隠しもしないなんて。
……ずるい。