第16章 【第十五話】順番待ちの恋
数日後。借りていた恋物語を返しに、私は書庫へ来ていた。
隅の棚の前で、誰もいないのを確かめる。
そっと本を棚へ戻そうとして――
「……ティファ」
びくりと肩が跳ねる。気付いた時には、本を背中へ隠していた。
振り向くと、ラビがいた。
右手の包帯は、真新しいものに巻き直されている。科学班で、ちゃんと診てもらったらしい。
本を背中に隠したまま、思わずその場を離れようとした。
「避けんなよ」
その一言で、足が止まった。
ラビは困ったように笑って、がしがしと頭を掻く。
「いや、まぁ……気まずいのは分かるけどさ」
図星で、言葉が出てこない。
ラビは少し黙ってから、一歩だけこちらへ近付いた。そこで足を止めて、小さく息を吐く。
「……別に、今すぐどうこう言えって話じゃねぇから」
翠の瞳が、まっすぐこちらを見る。
「オレは、お前が答え出すまで待つ」
優しい声だった。
背中に隠した本の角が、手のひらに食い込む。
「……ちゃんと、答えたいの」
自分でも驚くくらい、するりと言葉が出た。
その先は、ラビの顔を見ては言えなかった。
「だから……もし、あの時最後まで聞いてたら、私、なんて答えたんだろうって……ずっと、考えてたの」