第16章 【第十五話】順番待ちの恋
……違う、これは、そういうのじゃなくて。
思わず、本を胸に伏せた。
そもそも、恋なんてしたことがない。
私が知っている「好き」は、家族に向けるものと、仲間に向けるものだけだ。
……恋かどうか怪しいものなら、嫌というほど見てきたけれど。
師匠の元にいた頃に考えていたことといえば、明日の修行と、師匠のツケの返し方くらいだ。近くで見た恋なんて、師匠のものしかない。
どの街に着いても、師匠の周りにはすぐに女の人が集まった。誰が一番なのか、きっと師匠本人にも分かっていなかった。
鉢合わせた二人の間に挟まれたり、「あの人はどこ」と詰め寄られたりするのは、いつも私とアレンの役目だった。
誰にでもいい顔をして、誰にもちゃんと答えないのは、嫌だ。
ラビにだけは、いい加減な返事をしたくない。
なのに、肝心の答えが、まだ見つからない。
答えのないまま顔を合わせるのが気まずくて、気付けば、少しだけ距離を取ってしまっていた。