第15章 【第十四話】言いかけた熱
それから数日後。
医務室で包帯を替えてもらった帰り、私は科学班フロア近くの回廊を歩いていた。昼間でも薄暗い通路の奥で、遠くの機械音が低く響いている。
角を曲がりかけたところで、息を詰めるような声が聞こえた。
壁へ背を預けて、ラビが立っていた。
「ラビ……!」
思わず名前を呼ぶと、彼は一瞬だけこちらを見て、すぐに気まずそうに視線を逸らした。
「……なんでこんなとこいんさ」
顔色が悪い。呼吸も、どこか浅い。
慌てて近付いて、違和感に気付いた。
右手の包帯が、赤く染まっていた。書庫で見た時より、ずっと。
「それ、火傷が悪化してるんじゃないの?」
ラビが咄嗟に手を引いた。その拍子に、包帯の端がずれる。
覗いた皮膚に、息を呑んだ。赤黒く焼けた痕は、治りかけというには痛々しくて、まだ熱を持っているようにさえ見えた。
「……大したことねぇ」
「これが大したことないわけないでしょう!」
思ったより大きな声が出た。
ラビは少し黙り込んで、それから息を吐く。
「……まぁ、ちょっと無茶したさ」
「医務室、行きましょう」
「もう行った」
「じゃあ、ちゃんと治療を受けて」
「受けてるさ」
「嘘」
ラビが押し黙った。
「途中で抜け出したんでしょ」