第13章 【第十二話】記録に残らない熱
ラビが鉄槌を振り上げ、私の前へ立った。
「てめぇが、この場所をこうしたのか」
AKUMAの笑い声が、濁った金属音のように軋んだ。
「我らは、ただ守っているだけだ。あの御方が縫い止めたものをな」
「……あの御方だと?」
ラビの声が、低く落ちる。
AKUMAの顔が、こちらへ向いた。
「一度目は、広がりすぎた」
低い声が、遊園地の空気へ混ざる。
「土地も。人も。記録も。余計なものまで崩れ、望んだ形にはならなかった」
胸の奥へ、アンナの村の光景が蘇る。
音の消えた村。
存在そのものを失いかけた人々。
あれが、偶然ではなかった。
「だから今度は、閉じた」
AKUMAの声が、楽しげに軋む。
「死者が溜まった、この箱の中へ。十五年前、この地で死んだ者たちを、終われぬまま縫い止めた」
メリーゴーランドの奥で、ぼんやりと幾つもの影が揺れた。
子供。
母親。
制服姿の係員。
輪郭の欠けた人々が、薄い霧のように遊園地の各所へ立っている。
誰も声を上げない。
誰もこちらを見ない。
ただ、終われないまま、同じ場所へ留められている。