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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第15章 【第十四話】言いかけた熱 



「……見てたの?」

「…………たまたまさ」

掴まれていた手首が、ふっと緩む。


「ち、違うの。お世話って――」

慌てて、湿ったままの毛先を摘んでみせる。

「髪のことよ。乾かしてもらってるの」


「……髪?」

ラビは、ぽかんと口を開けたまま私を見ていた。



それから長い長い息を吐いて、私の肩口すれすれの本棚に、がくりと額を落とした。

「……髪、かよ」

「な……何だと思ってたの?」


「聞くな」

そう言って、ラビが顔を上げた。



――近い。

翠の瞳に、私が映っているのが見えた。


息が、触れた。


ラビの視線が、ほんの一瞬だけ、私の唇に落ちた気がした。

喉が、こくりと鳴った。


「……っ、悪ぃ」

ラビが、ばっと本棚から手を離す。


背中が、本棚から離れない。
唇のあたりに、さっきの息の温度が、まだ残っている。


ラビの目が、今度は私の濡れた髪へ落ちる。

「……リナリーに頼むんじゃ、駄目なのかよ」

「え?」


「……やっぱ、何でもねぇ」

ラビの右手が、握りかけて止まる。つられて目を落として、息を呑んだ。


白い包帯に、赤が滲んでいる。


「ラビ、その手――」

「平気さ」

ラビは顔を上げて、いつもみたいに笑ってみせた。


「……チャラ男は、大人しく退散するさ」

資料も片付けないまま背を向けて、ラビは書庫の奥へ消えていった。


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