第15章 【第十四話】言いかけた熱
そういえば最近、ラビに聞かれることが、少し変わった。
前は私自身のことばかりだったのに、ここ数日は、アレンのことばかりだ。
私はスープを掬おうとして、左手に匙を持ち替える。右腕が使えないと、食事ひとつにも時間がかかった。
ラビはしばらく黙ったまま、手元のパンを細かくしていた。それから、窓の外へ目を向けたまま口を開く。
「……そういやさ。夜九時頃って、何してんの」
「夜?」
「いや、この前たまたま聞こえたからさ。食堂で、アレンと、二十一時がどうとかって」
早口で付け足して、ラビは皿をこちらへ押しやった。一口大になったパンが、小さな山を作っている。
「……片手じゃ、食いにくいだろ」
「……ありがとう」
一つ摘んで口へ運ぶ。
……九時のことは、別に隠すようなことでもない。
「アレンがお世話してくれるの。毎晩。……すごく上手なのよ」
ラビが、口に含んだ水を盛大にむせた。
「お、お世話!?」
「ええ。昔は私がしてあげてたけど、今は逆なの」
「ティファ、ちょっといい?」
続けようとしたところで、食堂の入口からリナリーに呼ばれた。
「ごめんなさい、また後で」
席を立って振り返ると、ラビはコップを握ったまま、まだ固まっていた。