第15章 【第十四話】言いかけた熱
「へぇ……手まで」
妙に明るい相槌に、なぜか背筋がひやりとした。
ふと鏡を見ると、アレンは眩しいくらいの笑顔だった。修行時代に何度も見た、カードを配る前の顔だ。
「いいですか、ティファ。初対面で触ってくる男は、だいたい師匠と同じスケコマシです」
「ス、スケ……? アレン、どこでそんな言葉覚えたの」
「そんなこと、今はどうでもいいんです」
笑顔のまま、横から顔を覗き込まれた。
「とにかく。そういうチャラ男には、もう少し警戒してください」
勢いに押されて、思わず頷いてしまう。
アレンは満足そうに微笑むと、乾いたばかりの毛先を、一度だけ指で梳いた。
「……ちゃんと乾きましたね」
さっきまでとは違う、静かな声だった。
アレンは扉の前で一度だけ振り返った。
「おやすみなさい、ティファ。……また明日」
扉が閉まる。
鏡の中には、ふわりと乾いた銀髪の私がいた。
「……でも、そんなに悪い人じゃないのよ」
朝、店主にからかわれて、耳まで赤くしていたラビの顔が浮かんだ。
鏡に映った自分の口元も緩んでいて、私はそっと髪へ指を通した。