第15章 【第十四話】言いかけた熱
「はい、終わりました」
「ありがとう、アレン。……お礼、何がいい?」
「お礼なんて――」
言いかけて、アレンはドライヤーを置いた。少し考えるように視線を落とす。
「……じゃあ、話を聞かせてください」
「話?」
「僕が来るまでの間のこと。ティファが、ここでどうしてたのか」
「そんなことでいいの?」
「それが、いいんです」
鏡の中で、アレンがほんの少しだけ笑った。
「……僕の知らない顔、増えてる気がして」
「そう?」
左手を、そっと頬に当ててみる。鏡の中の私は、いつもと同じ顔をしていた。
「何から話そう……じゃあ、インドを出たところから」
アレンが、続きを待つように小さく首を傾げた。
「港でね、ショートブレッドっていうお菓子を買ったの。ほろほろしてて、美味しくて……汽車に乗る前に、一箱食べちゃった」
「……ティファが?」
「だって、止まらなかったんだもの」
アレンが小さく吹き出した。
「それで、教団に着いてからは?」
「教団に着いてから……」
思い返すと、真っ先に浮かんだのは、回廊の角で見た鮮やかな赤だった。
「……着いたその日にね、いきなり『ストライク』って言われたの」
「……え」
「初対面で、よ? しかも、手まで握ってきて」
呆れたはずなのに、思い出すと、つい笑ってしまう。