第15章 【第十四話】言いかけた熱
湯を上がったあと、リナリーとは廊下で別れた。
自室へ戻り、手拭いで髪を拭こうとしたけれど、右腕を少し上げただけで包帯の奥が痛む。
ドライヤーを片手で持てば、髪を梳く手が残らない。長い銀髪は半分以上湿ったまま、背中へ冷たく張り付いていた。
「……思ったより不便ね」
こんこん、と控えめなノックが響いた。
「ティファ、まだ起きてますか?」
扉を開けると、アレンが立っていた。左目の包帯が、廊下の灯りに白く浮かんでいる。
「戻ったって、さっき聞いて。……腕、どうですか」
答えるより先に、アレンの視線が私の髪で止まった。
「……髪、濡れたままじゃないですか」
「片手だと、上手くいかなくて」
アレンは、私の手から手拭いを取った。
「貸してください」
思わず笑ってしまう。
「昔は、私がアレンの髪を拭いてたのに」
「師匠の元に来たばかりの頃は、左手が上手く使えませんでしたから」
アレンは、手拭いを持った左手を少しだけ持ち上げてみせた。
「今日は、僕が拭きます」
「……じゃあ、お願いしようかしら」