第15章 【第十四話】言いかけた熱
大浴場は、湯気で白く煙っていた。石床へ響く水音。
私は椅子へ腰掛け、温かな湯の気配に、ほっと息を吐く。
背後から、リナリーの指先が長い銀髪へそっと触れた。
「痛かった?」
優しい声だった。
湯気の向こうへ、少しだけ目を伏せる。
「……少し、ね」
リナリーは、それ以上任務のことを問い詰めず、ただ、泡立てた手で銀髪を丁寧に洗い流してくれた。
引っ張らないように。傷へ響かないように。
水音だけが、静かに続いた。
「……トーマスさんの報告、少しだけ聞いたの」
不意に落ちた言葉に、肩が揺れた。
「ラビ、すごかったって。……ティファを取り戻す時」
――目ぇ閉じると、お前が消えんのが浮かぶ。
「……ティファ?」
リナリーが不思議そうに覗き込む。はっとして顔を上げた。
「な、なに?」
「ううん。……ラビと、仲直りできたみたいね」
「……喧嘩してたわけじゃないわ」
「そう? 出発前の二人、目も合わせてなかったけど」
返事に詰まっているうちに、リナリーがくすりと笑った。
「よかった」
それ以上、追及されることはなかった。