第15章 【第十四話】言いかけた熱
夕刻。
長い汽笛を鳴らしながら、汽車が教団最寄りの終着駅へ滑り込んだ。停泊していた黒塗りの小舟へ乗り込むと、水面が静かに揺れる。
夜の運河を進むと、巨大な石壁と隠し水路の灯りが見えてきた。ようやく、帰ってきたのだと思った。
「おかえりなさーい!」
本部へ戻った瞬間、エントランス側からジョニーの大きな声が響く。
「ティファ!ラビ!無事だったんだね!」
勢いよく駆け寄ってきたジョニーを見て、私は小さく笑った。
「心配かけたみたいね」
「そりゃあね! 途中で通信が途絶えて、次に入ったのが緊急連絡だったんだよ」
後ろでは、科学班の皆も口々に声を上げていた。
「空間ごと閉じてたって、本当か?」
「普通のAKUMAのやり口じゃないだろ、それ」
人の気配が増えた途端、ラビの顔に、いつもの笑みが戻った。
隣にいたラビが、すっと一歩離れる。ほんの僅かなのに、病院を出てからずっと近かった距離が、急に元へ戻った気がした。
「……?」
私は瞬きをした。
「いやぁ、死ぬかと思ったさー」
いつも通りの軽口なのに、さっきまで隣にあった気配が、急に遠のいた気がした。理由も分からないまま、私は視線を伏せる。
「……で、任務どうだったの?」
ジョニーが興味津々に身を乗り出してくる。
私は、ひとつ息を吐いた。
歪んだ遊園地。
消えかけていた少年。
空間を裂いたAKUMA。
脳裏へ蘇る光景に、喉の奥がひくりと強張る。
「ティファ」
顔を上げる。
翠の瞳が、静かにこちらを見ていた。
“無理して話すな”
そう言われた気がした。
少しだけ、肩の力が抜ける。息を整えて、ジョニーへ向き直る。
「……長くなるから、後でね」
そう言うと、ジョニー達が一斉に身構えた。
その横で、ラビの目元がほんの少しだけ緩んだ。