第15章 【第十四話】言いかけた熱
その時、近くの露店の店主が、にやにやしながらこちらを見ていた。
「いやぁ、お熱いねぇ」
二人の身体が同時に固まる。
店主は楽しそうに笑った。
「特にお兄さんの方、さっきから恋人離さないよう必死じゃないか」
「こ、恋人……!?」
声が裏返った。頬に、一気に熱が集まる。
「ち、違います! 人が多くて危なかったから、支えてくれただけで――」
言いながら、腰に回されたままの手に気付いて、言葉が途切れた。
見上げると、ラビの耳まで赤く染まっていた。
店主だけが、愉快そうに笑っている。
「お二人さん、初々しいねぇ」
「……うるせぇ」
ラビがぼそっと返す。その耳は、まだ赤いままだった。
熱の引かない頬のまま、そんなラビを盗み見る。
――恋人。
他人に言われた、たった一言なのに、どうしてこんなに顔が熱いのだろう。
昨夜から、少し変だ。ラビも――たぶん、私も。
でも――嫌じゃない。
むしろ、こうして彼の体温の近くにいると、なぜか落ち着く。
ラビは観念したように息を吐くと、ようやく腰から腕を離した。
「……ほら、汽車乗り遅れんぞ」
再び歩き出した彼の歩幅は、やっぱり自然に私へ合わせられたままだった。