第15章 【第十四話】言いかけた熱
遠くから、大きな歓声が上がった。
「始まったぞー!」
「パレードだ!」
鮮やかな衣装の楽器隊と踊り子たちが、広場の奥から一気に流れ込んでくる。舞い散る花弁の向こうから、人波が押し寄せた。
「っ――」
咄嗟に避けようとした瞬間、右腕を庇ったせいで身体がよろめく。
人の流れに押されて、巻き込まれる――と身を強張らせた時、ぐい、と腰を強く引き寄せられた。
「……ラビ?」
気付けば、ラビの腕が私の腰をしっかり抱き寄せていた。包帯を巻いた、右の腕だった。すぐ傍で、小さく息を詰める音がした。
そのまま、彼の胸元へすっぽり閉じ込められる。
「危な……」
頭上から、声が落ちてきた。
――頬を寄せた胸元から、ラビの鼓動が伝わってきた。
人波の喧騒が遠のくほど、鼓動の強さだけがはっきりした。
任務帰りの煤と、微かに焦げたような匂い。
私は胸元に閉じ込められたまま、驚いて固まっていた。
腰に回された腕が、思ったより熱い。
「……もう大丈夫さ」
ラビがそう呟いても、腰へ回された腕はすぐには離れない。むしろ無意識みたいに、ほんの少しだけ抱き寄せる力が強くなる。
瞬きをして、ラビを見上げた。
はっとしたように、ラビが視線を逸らす。
「……悪ぃ」
その耳は、隠しきれないほど赤かった。