第14章 【第十三話】夜明けまで、この手を
side:ティファ
薄い朝日が、ゆっくり病室へ差し込み始めていた。雨はもう止んで、窓硝子を伝う雫だけが淡い光を返している。
重い瞼を開くと、左手に、温かな感触があった。
「……?」
視線を落とす。
ラビが、ベッドのすぐ横に突っ伏すようにして眠っている。乱れた赤い髪と、疲れの色が濃く残る横顔。
私の左手を、握ったままだった。
数秒、思考が止まった。
昨夜の記憶が、少しずつ戻ってくる。ラビが傍にいてくれたこと。彼の声を聞いて、安心して眠ってしまったこと。
ずっと、このままだったのだろうか。
握られた指先から、じんわりと熱が伝わってくる。
「……ん」
ラビが微かに眉を寄せた。
起こさないように、そっと手を離そうとする。
きゅ、と。
眠ったまま、ラビの指先に力が入った。
――逃がさないように。
私は思わず息を呑んだ。
こんこん、と軽いノックの音が響く。
「失礼しま――」
朝食のワゴンを押した昨夜の看護師が、扉を開けたところで、ぴたりと足を止めた。
繋いだままの手と、ベッドのすぐ傍で眠り込んでいるラビ。
看護師が、ゆっくり瞬きをした。
それから声を潜めるように、ワゴンを静かに壁際へ寄せる。