第14章 【第十三話】夜明けまで、この手を
「動かさないでください」
医師の声と共に、傷口へ消毒液が触れた。
「……っ」
鋭い痛みに思わず息を呑むと、向かいの椅子でラビが舌打ちした。
「……おい。もっと優しくできねぇのかよ」
「ラビ」
私の腕へ包帯を巻いていた医師が、呆れたように眉を寄せる。
「君、自分の火傷の方が酷いんだよ。人の心配をしている場合じゃない」
「オレは後でいい」
「後じゃ駄目よ」
今度は私が遮った。ラビが、ぴたりと黙る。
「今、診てもらって」
看護師の一人が、堪えきれないように小さく笑った。
「はいはい、二人とも大人しくしてください」
年配の医師が、深く息を吐く。
「そっちの赤髪の君も、そこへ座る。火傷、かなり深いよ」
ラビは露骨に不満そうな顔をしたが、私が黙って見つめていると、渋々肩を竦めた。
「……分かったさ」
向かいの椅子へ腰を下ろしたラビの腕から、包帯が解かれていく。赤く焼けた皮膚が、手首から肘のあたりまで広がっていた。
「はい、次は消毒しますよ」
医師が、ラビの腕へ薬液を当てる。
「っ……」
彼の眉が、ほんの僅かに歪んだ。
「……痛いの?」
無意識に、口から零れていた。
「……誰のせいだと思ってんだ」