第14章 【第十三話】夜明けまで、この手を
病院の奥から、白衣姿の医師と看護師たちが慌ただしく駆け寄ってくる。団服を見た途端、彼らの表情が変わった。
「すぐ処置室へ!」
「患者は二名……いえ、その子供もです。三名、急いで!」
「担架を持ってきて!」
「ラビ」
小さく名前を呼ぶと、ようやく彼の視線が私へ戻った。
私は痛む腕を庇いながら、微かに口元を緩める。
「……ちゃんと、いるわ」
ラビの呼吸が、僅かに止まった。
何かを言いかけるように唇が動いて、結局何も言わないまま、視線が逸れる。
「……馬鹿」
ラビの指先が、確かめるように私の袖に残っている。
私は左手で、その指をそっと握った。
「……ラビも、診てもらって」
「オレは平気さ」
そう言う肩は、まだ大きく上下していた。
「平気じゃないわ。……お願い。ちゃんと診てもらって」
ラビの視線が、握られた自分の指へ落ちた。
「……ん」
慌ただしい声が飛び交う中、私たちは処置室へ運ばれていく。
ラビの指は、最後まで私の袖を離そうとしなかった。