第13章 【第十二話】記録に残らない熱
汽車は重たい蒸気を吐き出しながら、北方線を走り続けていた。
窓の外の景色は、次第に人気のない荒野へと変わっていく。積もった雪が灰色の空の下で鈍く沈み、枯れた木々が細い影を伸ばしていた。
昼間のはずなのに、車内はどこか薄暗い。目的地へ近付くほど、世界から色が抜け落ちていくみたいだった。
向かいの席では、トーマスが何度も資料を読み返している。
「……先行班が最後の報告をする少し前に、妙な記述が残っています」
資料から目を離さないまま、トーマスが口を開いた。声が、僅かに強張っている。
「足音が遅れて聞こえる。それから、遊園地までの距離が、見るたびに変わっているように感じる、と……」
窓際に座るラビが、外を見たまま答える。
「油断できねぇな」
その声は、任務中の冷静なものだった。
それなのに、その奥に別の何かを探してしまう。
昨日、目を逸らされたこと。食堂で、倒れかけたグラスを押さえていた手。
窓際の彼と私の間は、もう一人座れるほどしか空いていないのに、ずっと遠く感じた。
窓硝子へ映るラビの横顔は、どこまでも静かだった。
その横顔が、不意に口を開く。