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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第2章 【第一話】雪に残る歌


分かった上で、私は歌い続けた。
ここで止めれば、もっと苦しませる。

白銀の光が強くなる。

AKUMAの身体へ、いくつもの亀裂が走った。

歪んだ仮面が崩れ落ちる。
黒い身体が、光の粒へと変わっていく。


そして、最後の瞬間。
少女の泣き声が、ふっと止んだ。


器が砕ける。

その奥から、小さな光が浮かび上がった。


私は息を呑む。


あの日、母を包んだものと同じ。

魂の光。

代わりに聞こえたのは、風へ溶けてしまいそうなほど穏やかな声だった。


『ありがとう……』

光が、空へ昇る。


私はただ見つめていた。


歌が途切れる。
力が抜け、私はその場に膝をついた。


震える手を見つめる。


この声で、私は一つの器を壊した。

そして、その中に囚われていた少女の苦しみを終わらせた。


それでも。

本当に正しかったのか。
本当に救いだったのか。

幼い私には、まだ分からなかった。


「立て」

師匠の声が降ってくる。
顔を上げることができない。


「私……」
「今のを忘れるな」

低い声。

「中の声を聞け」

そして。

「必要なら、壊せ」

涙が雪へ落ちる。

「怖い……」

初めて、そう口にした。


師匠は少しだけ黙った。
けれど、優しい慰めは返ってこなかった。


「怖くなくなる必要はねぇ」


意外な言葉に、私は顔を上げる。
師匠は既に背を向けていた。

「怖ぇまま歌え」

低い声。


「痛みを忘れた奴から、化け物になる」

それだけ言って、歩き出す。


私は袖で涙を拭い、雪へ手をついた。


足はまだ震えている。
胸の痛みも消えない。

それでも、立ち上がる。



母の魂を送った歌。

母を奪ったAKUMAを砕いた白銀の光。


そして、少女の声へ届き、その苦しみを終わらせたチカラ。


そのすべてを抱えたまま、私は師匠の背中を追った。
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