第2章 【第一話】雪に残る歌
死が目の前へ迫ったその時、乾いた銃声が響いた。AKUMAの腕が弾かれ、私の頬のすぐ横を掠めて雪へ突き刺さる。
「甘ぇな」
背後で、師匠が銃を下ろした。
「お前が迷ってる間にも、そいつは人を殺す」
AKUMAが腕を引き抜き、再びこちらへ向き直る。
『たすけて……』
少女の声が、また聞こえた。
私は唇を噛んだ。
歌いたくない。壊したくない。あの日は何が起きたのか分からないまま光が溢れた。今度は自分で歌って、あの子を閉じ込めているものを壊さなければならない。
雪に膝をついたまま、胸元へ手を添えた。
「ごめんね……」
息を吸うと、小さく震える旋律が零れた。帰りたいと泣く少女の声を聞きながら、喉の奥に宿るもう一つの熱へ意識を繋いだ。
――ニルヴァーナ。
白銀の光が喉元から溢れ出した。歌へ、鋭い力が重なる。
声が、震えなくなった。
歌は祈りのまま、光だけが刃となってAKUMAの身体を貫いた。
「ァアアアアアアッ!」
AKUMAが絶叫する。
同時に、少女の悲鳴が胸へ流れ込んできた。喉が詰まり、歌が途切れそうになる。