第13章 【第十二話】記録に残らない熱
翌朝。
教団本部の正門前には、まだ夜の冷たさを残した薄い霧が漂っていた。吐いた息が白くほどけ、凍えた石畳の上へ消えていく。
私は団服の上から外套を羽織り、手荷物の留め具を確かめた。
少し離れた場所では、若いファインダーが大きな鞄の留め具を何度も確認していた。彼は私に気付くと、慌てたように背筋を伸ばす。
「ティファ様ですね。今回同行させていただく、トーマスです」
「ティファでいいわ。よろしく、トーマス」
「は、はい。よろしくお願いします」
緊張の抜けない様子で頭を下げる姿に、僅かに口元が緩んだ。
石畳を踏む足音が近付いてくる。
「よ」
振り向けば、ラビがいつもの軽い笑みを浮かべながら歩いてきた。昨日の回廊で交わした沈黙など、最初からなかったみたいに。
「おはよう、ラビ」
「おはよ。ちゃんと眠れたか?」
「少しは」
「そりゃよかった」
ラビの視線は、一瞬私へ触れただけで、すぐにトーマスへ移った。
「現地までの経路、確認は済んでんのか?」
「はい。北方線で終着手前の無人駅まで向かい、そこから徒歩でおよそ一キロです。遊園地へ入る前に、先行班が残した中継地点を確認する予定です」
「りょーかい。現地で異常が出たら、測定器だけ見て動くなよ。数値が狂ってる可能性もある。変だと思ったら、すぐ声を出せ」
「は、はい!」