第13章 【第十二話】記録に残らない熱
執務室を出て扉が閉じると、張り詰めた空気が、冷たい回廊の静寂へ変わった。
隣では、ラビが受け取った資料へ視線を落としている。
昨日のことを謝るなら、今しかない気がした。
「……ラビ。昨日は――」
彼の指先が、僅かに止まる。
こちらを見る前に、ラビは資料を軽く持ち上げた。
「悪ぃ、ティファ。出発前に確認しときたいことがあるんさ」
言いかけた「昨日は」の続きを、私は黙って飲み込んだ。
「ティファも、今日はちゃんと休んどけよ。……明日から、何があるか分かんねぇんだからさ」
「……ええ」
それ以上、何も言えなかった。
ラビは軽く手を振ると、廊下の向こうへ歩き出す。
明日、同じ任務へ向かう。隣で戦うことになる。
それなのに、遠ざかっていく背中は、手を伸ばすほど遠くなる気がした。