第13章 【第十二話】記録に残らない熱
「現地案内と外部連絡のため、ファインダーを一名同行させる」
リーバー班長が、私たちの前へ資料を滑らせた。
「トーマスという若い奴だ。以前、遊園地周辺の外周調査に参加している。内部へ深く入った経験はないが、最寄り駅から現場までの経路と、先行班の中継地点は把握してる」
資料には、遊園地周辺の簡易地図と、先行班の最終通信位置が記されていた。行方不明者の数、異常が最初に確認された日時、測定値の乱れ。
短く並んだ情報の一つ一つが、目に見えない糸で結ばれているように感じられる。
「遊園地の外周には、支援のファインダー班を待機させる。定時連絡が途絶えた場合は、本部へ知らせる手筈だ」
「中へ踏み込むのは、私たち三人だけ……ということですね」
「そうなる」
コムイさんの瞳が、僅かに厳しさを増した。
「出発は明日の早朝。異常の規模が予想を超えている場合、あるいは明確にティファちゃんを狙う動きが確認された場合は、すぐ撤退すること。決して深追いはしないでくれ」
「はい」
「了解さ」
「ラビ」
それまで黙っていたブックマンが、口を開いた。
「何さ、じじい」
「何を記録しに行くのか、忘れるでないぞ」
ラビの口元が、ほんの僅かに歪んだ。
「……分かってるさ」
返事は軽かった。地図へ落とした視線だけが、上がらなかった。
その言葉が何を指しているのか、今の私には分かってしまった。
ラビの横顔が、ひどく遠く見えた。
「では、明朝六時に正門前へ集合だ。追加資料は、出発前に渡す」
コムイさんは、最後に私たちを順番に見た。
「二人とも。必ず戻ってくるんだよ」
どんな指示よりも、その一言が重く残った。