第13章 【第十二話】記録に残らない熱
あくまで任務のため。必要だから、自分が行く。
そう聞こえる言葉だった。
机の端へ置かれた彼の手は、僅かに強く握られていた。
狙われるのが、私なら――
私の傍にいれば、ラビまで巻き込むかもしれない。
それでも彼は、断らなかった。
「……二人だけ、ですか」
思わず尋ねると、リーバー班長が険しい表情のまま資料を一枚取り上げた。
「前回と同種の現象なら、人数を増やせば安全になるとは限らねぇ。内部で位置関係を崩されりゃ、分断される人間が増えるだけだ。異常の範囲も性質も分からない以上、大人数は入れられない」
コムイさんが、言葉を継いだ。
「だから今回は、最小限の編成で動いてもらう。目的は、異常の確認。消息を絶った先行班の捜索。そして、生存者がいる場合の救出だ。敵との交戦が避けられない場合を除き、無理に現象の中心へ踏み込む必要はないよ」
――怖い。
狙われるかもしれないことも、あの素っ気ない横顔をすぐ傍で見続けることも。
それなのに、「行くさ」と言った声を思い出すと、強張っていた指先がほどけていく。
隣にいてくれるなら、きっと大丈夫だと思えてしまう。
……それが嬉しくて、少しだけ苦しかった。