第13章 【第十二話】記録に残らない熱
コムイさんの表情は、晴れない。
「ティファちゃん。病院で話した通り、君の能力を千年伯爵側が把握しているなら、君自身が狙われる可能性はある。今回の異常が敵の仕掛けたものなら、現場へ向かうこと自体が危険かもしれない」
地図の赤い印から、目を逸らすことはできなかった。
「……行かせてください」
私は喉元から手を下ろした。
「私にしか気付けないものがあるなら、見過ごしたくありません」
コムイさんは、しばらく私を見つめていた。
それから、ラビへ視線を移す。
「ラビ。君にも行ってもらうつもりで呼んだ。……ただ、無理にとは言わない」
執務室が、短く静まり返った。
「行くさ」
思わず、彼の横顔を見る。
ラビは地図へ視線を落としたまま、淡々と続けた。
「前の村のこと、オレは見てる。ティファの歌があの歪みにどう作用したか、現象の中で何が起き得るか……少なくとも、何も知らねぇ奴よりはマシに動ける」
「ラビ……」
名を呼んでも、彼はこちらを見なかった。
「それに、先行班が消えてんなら、現場を記録して持ち帰る奴がいる。前と同じ現象か、別モンか。……見極めんなら、オレが行くのが手っ取り早ぇだろ」