第13章 【第十二話】記録に残らない熱
ラビが、机の端へ片手を置いた。
「現地へ入ったファインダーは?」
コムイさんの表情が僅かに曇る。
「先行して調査へ向かった二名が、昨日から消息を絶っている。最後の通信は、遊園地の正門へ到着したという報告だった」
「……正門までは辿り着けた。けど、中へ入った後の記録が一つも残ってねぇってことか」
「おそらくはね」
ラビの指先が、机の縁を一度だけ叩いた。小さな音が、静かな室内でやけに重く響く。
私は無意識に、喉元へ触れていた。
アンナの村で感じた、あの歪んだ残響。薄れていく人々の輪郭。消えかけた小さな命を繋ぎ止めるために歌った時の、喉を裂くような熱。
「私の歌なら、この歪みに気付ける可能性があるということですか」
問い掛けると、コムイさんは静かに頷いた。
「そうだ。前回も、君は歌を通してあの異常を捉えていた。もし同じ性質の歪みが起きているなら、現地で何かを察知できる可能性が高い」
「……分かりました。行きます」
言葉は、考えるより先に出ていた。
誰かが、あの村の人々と同じように消えかけているのなら、ここで背を向けることはできなかった。