第13章 【第十二話】記録に残らない熱
背後で扉が開き、リーバー班長とブックマンが入ってきた。
机の上には、何枚もの報告書と大きな地図が広げられている。北方区域を示した地図の一角に、赤い印が付けられていた。
「揃ったね」
コムイさんは書類の束を机へ置くと、眼鏡の奥の瞳を僅かに伏せた。
「二人に来てもらったのは、北方区域で確認された異常についてだ」
コムイさんの指が、地図の赤い印へ触れる。
「ここに、十五年前から放棄されている遊園地がある。園内で大規模な火災事故が起き、多数の死者が出た場所だ」
色褪せた紙面に記された、小さな円形の印。ただの地点を示しているだけのはずなのに、ひどく冷たく見えた。
「数ヶ月前から、その周辺で行方不明者が相次いでいる。最初は事故や盗賊の被害とも考えられていたけれど、最近になって微弱なAKUMA反応が確認された」
リーバー班長が、別の書類をこちらへ差し出す。
「それだけじゃねぇ。現地へ入ったファインダーから、妙な報告が上がってる。距離の測定値が安定しない。音が途中で消える。目視した人影が、記録装置には残らない……とな」
紙面に並ぶ文字を追う指先が止まった。
音が消える。記録に残らない。存在そのものが、曖昧になる。
「……アンナの村と、似ている」
気付けば、そう呟いていた。
ブックマンが、短く息を吐いた。
「わしも報告を読んだ。まだ同じ現象とは断定できん。だが、無関係と言い切るには、類似点が多すぎる」