第12章 【第十一話】触れてはいけない距離
翌朝。
教団の回廊でラビとすれ違った時、私は無意識に足を止めていた。
「よ、ティファ。おはよう」
ラビはいつも通り、軽く手を振った。その視線は、私の肩のあたりで止まっている。
「……おはよう」
返した声が、少しだけ小さくなった。
ラビは気付かなかったふりをして、そのまま私の横を通り過ぎる。
前なら、余計な軽口を二つも三つも重ねてきたはずなのに。今日は、何もない。距離だけを丁寧に残して、足音が遠ざかっていく。
呼び止めたところで、彼がまた何も答えないことは分かっていた。私は、振り返れなかった。