第12章 【第十一話】触れてはいけない距離
「……嘘」
思わず零れた声に、ラビの笑みが僅かに止まった。
私は一歩だけ距離を詰める。
「報告があるのは本当かもしれない。でも、それだけじゃないでしょ……あなた、さっきから一度も私の目を見ていないわ」
ラビは、笑ったまま首を傾げた。
「……何さ、それ。オレがティファの顔見なきゃ不満?」
「誤魔化さないで」
私は、ラビから目を逸らさなかった。
「あなた、私から距離を置こうとしているでしょ」
ランプの炎が揺れ、彼の顔へ落ちる影が僅かに動く。
「書庫で、聞いたの」
ラビの瞳が動いた。
「……何を」
「ブックマンが、あなたへ言っていたこと」
喉の奥が小さく詰まる。
「セトラの娘へ向けた情は、捨てろって。情は、記録を曇らせるって」
ラビの口元から、残っていた笑みが消えた。
記録帳を握る指に、白くなるほど力が入っている。
「……聞いてたのか」
私は拳を僅かに握り締める。
「だから、離れようとしているの?」
「……離れなきゃなんねぇんだよ」
押し殺すように、ラビが呟いた。
「オレは、次期ブックマンなんさ。……誰か一人に肩入れするなんざ、許されねぇ」
「それは……」
胸が、痛んだ。